豊かな感性を育む環境づくり。屋久島地杉をふんだんに使った木造園舎〈いわき短期大学附属幼稚園〉

福島県いわき市で、儒学を基とした道徳教育を建学の精神に掲げられている〈学校法人昌平黌〉様。四年制の〈東日本国際大学〉を始め、短期大学、中学・高等学校、幼稚園と多岐に渡り教育機関を運営されています。2021年には、築40年を迎えた〈いわき短期大学附属幼稚園〉の建て替え計画をスタート。『木の温もりのある木造園舎』をコンセプトに、『遊びの中で育てる』という当園のポリシーが反映された新園舎が2023年に完成しました。

“ご依頼いただいた時から「木造の園舎をつくりたい」ということを伺っていました。私はというと、柔らかさや調湿性が際立つ杉が子どもたちにとっても働く先生方への足裏にも良いだろうということで、設計当初からフローリングは杉にしたいという想いがあって。ただ、設計を進める中で様々な意見があがり、杉を床材に使うのは難しいかもしれないという局面もありましたね。”

そう語るのは、全国的に数々の公共施設を手がける〈株式会社楠山設計〉で設計士としてご活躍されている野海彩樹様です。今回、園舎の床材にご採用いただいた屋久島地杉フローリングは、クライアント様と協議を重ね決定されたといいます。本取材では〈学校法人昌平黌〉の緑川明美常務、〈いわき短期大学附属幼稚園〉の齋藤紀子園長、そして設計士の野海様に設計過程から竣工に至るまで、また新園舎で過ごす園児たちの様子など様々なお話を聞かせていただきました。

屋久島地杉フローリング
国内年間平均降水量の2倍を上回る降雨環境で育つ屋久島地杉。特異な環境下で育つことから、一般的な杉と比べて油分を多く含んでおり耐久性・耐候性に優れている。また、ヒノキ科やスギ科といった樹木の香りに含まれているαセドロール(リラックス・安眠効果を発揮する)の成分量が高く、室内空間に安らぎや癒しをもたらす効果を持つ。
商品情報はこちら→https://www.channel-o.co.jp/yakushimajisugi

屋久島地杉プロジェクトについて
2015 年より、世界自然遺産「屋久島」の人工林で育った樹齢50 ~ 60 年の「屋久島地杉」を有効活用するプロジェクトをスタート。島内の林業関係者と協働し「自然林、生態系として守る森林」と「産業林として活性化させる森」の両立を目指した取り組みを行う。
プロモーションビデオはこちら→https://youtu.be/UaUO4VioVRk?si=rMCi03bLWoWZm1jX

子どもたちが思いのままに日常を楽しめるデザイン設計

大きな園庭を囲むように、L字型の「保育室棟」と離れの「遊戯室棟」が向かい合う新園舎。この2棟をつなぐようにバルコニーがかけられているため、室内と園庭間の移動がより容易となり、異学年での交流が図りやすい環境が整えられています。さらに、軒を深くしたインナーテラスを一部に設けることで、室内との一体利用も可能な「外あそび」の場が確保されています。

“どこにいても、どの学年がどんなことに興味を持って遊んでいるかが、本当によく分かるんです。先日、年長さんが園庭で見つけた葉っぱについて図鑑で調べていたのですが、その様子が他の子どもたちにも見えるので、年中さんや年少さんも興味を持って一緒に調べ始めるんですよ。自然環境下で年上の子の遊びを見て学んだり、刺激を受けて新しい遊びが生まれたりするのは、やっぱりこの環境あってこそだと思いますね。”(齋藤園長)

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園舎には、子どもの自由な発想が活かされる場所がたくさん設けられています。
まずは、開放的なエントランスホールです。園児たちや来園者を出迎えるだけでなく、広さを活かした遊びや工作の場としても活用することができます。存在感のある2本の柱は子どもが抱きつけるサイズ(400~450π)となっており、完成当初から園児たちの人気スポットとなっています。また、園内には膨らみをもたせた〈でん〉も設置されています。廊下からは少し奥まっているため籠もり感を得ることができ、絵本を読んだり、かくれんぼに使ったりと、その時の気分や状況にあわせて使うことが可能です。

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園舎の大きな特徴である「トラス構造」は、保育室棟と遊戯室棟でそれぞれ形を異なるものにされました。遊戯室棟は、園に通う子どもたちが共通の記憶を持てるようシンボリックな形状に。保育室棟は、園児たちが工作した作品を多く飾る当園の特徴を考慮し、吊り下げても展示ができるデザインとしています。

子どもの目線に立って考えられたデザイン設計が随所に感じられる当園。教育施設の設計において、野海様が大切にされていることを伺いました。

“教育・勉強というものが、座学やテキストだけから受け取るのではなく、日常生活の中とリンクしているようなところをつくりたいと思っています。今回で言うと、あえて雨樋を鎖型にしたというのもありますね。これ雨が降ると結構飛び散るタイプなので、現場から本当にこれでいいの?と言われたんですけど(笑)でも、天気って子どもたちにとっては一番面白い現象だと思いますし、それを楽しんでほしいのであえて取り入れるようにしました。”

『木の温もりのある木造園舎』に込められた想い

木造園舎の要でもある床材には、屋久島地杉のフローリングを全面にご採用いただきました。採用にあたっては、設計・施工・運営・現場関係者が一同に集い、協議を重ねられたといいます。

素材選定に関わられた緑川常務は、当時のことをこう振り返ります。
“杉のフローリングは(広葉樹やウレタン塗装されたものに比べて)傷がつきやすいしメンテナンスも大変ではないか、という意見もありました。実際にサンプルに爪を立てて「やっぱり傷がつくじゃないか」と。じゃあどう大変なのか、それを改善するにはどうしたらいいのか、というのを一つ一つみんなで何回も話し合って。議論を重ねるうちに、そもそも無垢材は傷がつくものだし、この傷がここで過ごした想い出や歴史として残っていくのも良いよね、というほうへ変わっていきました。”

話し合いの当初から屋久島地杉をご推薦いただいていたという緑川常務。屋久島地杉プロジェクトのストーリーや材の特性に加えて、教育方針の観点からも採用を考えられていたことを教えてくださいました。

“当園では、2歳~6歳という大切な時期に『自然に囲まれた環境で、本物に触れながら遊びの中で学ぶ』ということを非常に重視しています。例えば、アジサイの絵を描こうとなった時に、やっぱり空想だけでは限界がありますよね。実物を見に行くことで、こんな風に咲いてるんだとか、こんな色なんだ、というのを知ることで、それが表現や遊びに活きてくると思います。”

“また、私もここを卒園したんですが、通っていた頃に「木の小屋」を作ったことがあったんです。数十年経って見に行ったら、同じ場所にちゃんと残っていて。色落ちしているところもあれば、そうでないところもあって、姿こそ違うけど「みんなで一生懸命作ったな」という記憶が鮮明に蘇ってきたんです。それに娘がその小屋で遊んでいる姿を見た時は、時代を超えて引き継がれた感動があったというか…やっぱり嬉しかったですね。

これから卒園する子たちがいつか遊びに来てくれた時に「フローリングの色が変わってる!」とか「この床の傷、僕がつけたものだ!」みたいに、その子の想い出が園舎に残っていたらすごく良いなと。経年変化を楽しんでもらえるという意味でも、屋久島地杉を採用したいと思いました。“

園舎がもたらす新たな学びと広がり

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新園舎の開設後、幼稚園では様々な新しい取り組みを始められています。同グループの四年制大学・短期大学と連携し、保育・教育心理の専門家を招いた保護者・幼稚園教諭向けの勉強会や、卒園生を対象とした空手教室などを開催。各方面との連携がより強固になることで教育の質がさらに向上し、子どもたちの成長を支える基盤が一層充実していくことが期待されます。

本物の自然に触れ合える環境を園舎に反映されたことで、これまでの学びをさらに深めながら、その場を広げられている〈いわき短期大学附属幼稚園〉様。幼い頃から予測のつかない自然に触れ、その多様な側面を知ることで、豊かな感性は育まれていくのだと本取材を通して感じました。

今回、幼稚園に通う子どもたちの日常、そしてかけがえのない想い出を形成する素材の一つとして、屋久島地杉ウイルウォールをご採用いただいたことを大変嬉しく思います。貴重なお話を聞かせていただいた緑川常務、齋藤園長、野海様、本当にありがとうございました。

いわき短期大学附属幼稚園
福島県いわき市平鎌田石名坂6
https://www.iwatan-kinder.jp/

運営:学校法人昌平黌
福島県いわき市平鎌田寿金沢37
https://www.shk-ac.jp/shk/#gsc.tab=0

設計:株式会社楠山設計
東京都千代田区神田小川町3丁目20-4
http://www.kusuyama.co.jp/

弊社納材商品
屋久島地杉フローリング 節有 厚み15㎜×巾85×長さ1,950/2,950㎜(春風クリアオイル塗装)
屋久島地杉フローリング 節有 厚み15㎜×巾100×長さ2,950㎜(春風クリアオイル塗装)
ウイルウォール チャネルサイディング